海の声新聞

海が言葉を持ったら
ぼくらに
何を言うだろう。

人間が生み出すプラスチックごみが
生き物の命を奪っているという悲しい事実。

何も言わずに傷ついていく海に代わって
大きな声でお伝えしたいと思いました。

つくったのは、
およそ縦50m×横35mの
史上最大級の新聞。

砂浜に小さな溝をつくって描いた
自然に還る新聞です。

「海の声新聞」記事内容

 海は何も語らない。だから、代わりに伝えようと思う。いま、地球の海で多くの生物の命が奪われつづけている。原因はプラスチックだ。ビニール袋、プラスチックボトル、発泡スチロール…暮らしに身近なプラスチックが年間800万トンも川や海に捨てられ、ゴミとして漂う。プラごみを飲み込んだり体に絡ませたりして、ウミガメや海鳥、アザラシ、魚など約700種もの生き物が傷つき命を落としているのだ。
 やっかいなのは、一度海に流れ出したプラスチックごみは容易には分解されず数百年もの間、負の遺産として残り続けることだ。分解に必要な年数はプラスチックボトルで約400年。釣り糸なら約600年と途方もない年月だ。その過程でプラスチックごみは長い時間をかけ、太陽の紫外線や波しぶきで細かく砕かれる。5ミリ以下の微小な、「マイクロプラスチック」となれば、生き物の体内へ気づかぬうちに取り込まれてしまう。その結果がどんな影響をもたらすのかはまだ明らかになっていない。
 プラスチックごみは増加の一途をたどっている。このまま私たちが何の改善策も取らなければプラスチックごみの量は海にいる魚の量を上回るとさえ言われている。私たち日本人にも大きな責任がある。日本の一人当たりのプラスチックごみの発生量は世界第2位。この現実を止めるためにもいま海で起きていることにしっかりと目を向けなければならない。経済の成長や便利な生活を優先するあまり無視にしてきたものについて思いを馳せなければならない。ごみを出さないこと。再利用すること。声をあげること。考え続けること。やるべきことはわかっている。多くの恵みや喜びを与えてくれている海に、私たちは何を返すことができるだろう。

制作風景

制作日数はのべ11日間。
千葉県飯岡海岸の砂浜に描きました。
サンドアーティスト保坂俊彦さんの指導のもと、
地元住民の方や学生の方など、
多くの人とつくりあげていきました。

掲載された新聞原稿

[協力]あさひ砂の彫刻美術展実行委員会の皆さん、地元有志の皆さん、学生の皆さん

[参考]WWFジャパンWEBサイト『海洋プラスチック問題について』、Neufeld, L., et al. (2016)、Gall&Thompson (2015)、NOAA Marine Debris Program,Ocean Conservancy, SC Sea Grant、UNEP (2018)、熱可塑性プラスチック及びポリウレタンの素材生産量。Plastics Europe (2017)

※画像は、一部修正をしています。

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